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宮古上布とは?歴史や特徴と見分け方について解説

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重要文化財

宮古上布は沖縄県宮古島で作られる伝統的な織物で、織物のなかでも最高級品とされており、高価な反物や着物として販売されています。

普段から着物に触れる機会がある方や着物が好きな方はご存知かもしれませんが、宮古上布にはどのような特徴があるか、知らない方も多いでしょう。

今回は宮古上布の歴史や特徴、他の織物との見分け方について解説します。

目次

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宮古上布(みやこじょうふ)とは

宮古上布は、苧麻(ちょま)という麻の繊維を、手で1本1本裂いて作った糸で織られる麻織物です。

苧麻の栽培から砧打ちまで、すべての工程が沖縄県宮古島でおこなわれています。

約40日で生育し年5回ほど収穫できる苧麻は、沖縄地方に自生する植物です。

その苧麻から作った細い糸を、琉球藍で何度も染め重ね、長い時間をかけて織り上げます。

すべての工程が手作業でおこなわれるため、1つの反物が仕上がるのに数年かかることも珍しくありません。

日本三大上布の1つ

宮古上布は「越後上布」「近江上布」と並ぶ、日本の三大上布の1つです。

布には、上布(じょうふ)・中布(ちゅうふ)・下布(かふ)があり、なかでも特に上質な布や着物、帯を上布といいます。

宮古上布の着物や帯は、通気性が良く夏でも快適に過ごせるため、夏の最高品質の上布といわれています。

国の重要無形文化財

宮古上布は藍染の麻織物の最高級品として、1975年に伝統的工芸品に指定、1978年に国の重要無形文化財に指定されました。

また、宮古上布の原料である苧麻糸の製造技術「苧麻糸手績み」は、2003年に国の選定保存技術に選ばれています。

重要無形文化財と伝統的工芸品は指定要件が異なります。

重要無形文化財に指定されるためには、手績みの苧麻と純正植物染を使用し、織りや砧打ち(きぬたうち)など、すべての行程を手作業で仕上げられるのが要件です。

宮古苧麻織とは違う

宮古島の織物には、宮古上布に近い風合いの宮古苧麻織があります。

宮古上布は経糸(たていと)・緯糸(よこいと)緯糸に手績みの苧麻糸を100%使っているため、生産量が少なく高価で手に入りにくい高級品です。

一方で宮古苧麻織は、緯糸だけに100%手績みの苧麻糸を使い、経糸には機械によって作られたラミー糸を使っています。

染料も植物100%でなければならないなどの縛りがないため、化学染料でも染められます。

宮古上布のコストのかかる行程を他の方法で代用し、大幅にコストを抑えたものが宮古苧麻織です。

「宮古上布は高価で手が届かないけれど手績みの風合いを感じたい」という方に人気があります。

宮古上布の歴史

宮古島では、15世紀頃から苧麻を使った織物があったと考えられています。

では、宮古上布はどのように生まれ、どのように広まったのでしょうか。

本項では宮古上布の始まりから戦後の衰退までの歴史を解説します。

宮古上布の始まり

400年以上前、琉球から明へ向かう貢物を乗せた船が暴風に襲われ、船をコントロールする舵(かじ)と船体をつなげていたロープが切れ、沈没しそうになりました。

そのとき宮古島のある男が、荒れる海に飛び込み修理用のロープで固定し、乗組員の命を救います。

その乗組員たちは、男の活躍で無事に帰れたことを琉球王に伝え、琉球王は男に高い位を与えました。

喜んだ男の妻が、感謝の思いを伝えるために献上した麻の織物が、宮古上布の始まりといわれています。

その後約20年以上、宮古上布は琉球王国に献上され続けました。

薩摩上布として広まる

1609年(慶長14年)に琉球が薩摩の支配下になると、宮古上布は琉球王朝だけではなく、薩摩藩や江戸幕府へ献上品として送られるようになります。

その後人頭税という年貢布制度が始まり、男女15〜50歳は高さ143cmの人頭税石より背が高くなると、男性は粟、女性は宮古上布の納付が義務づけられました。 

厳しい監視の下で作られた宮古上布は、織り上がりの美しさとレベルの高い技術で高く評価され、薩摩藩は薩摩上布として大阪や京都の呉服問屋に送ります。

そのため、宮古島で作られた麻織物の最高級品は、薩摩上布として各地へ広まっていきました。

最盛期と戦後の衰退

人頭税が廃止されたあと、宮古上布は民間の事業として生産が継続されます。

生産・販売が自由になり厳しい検査がない状況下で上質な品質を保つため、織物組合が作られました。

最盛期となったのは生産量が増えた大正時代から昭和の初期にかけてで、年間の生産量は1万反を越えます。

しかし、太平洋戦争が始まるとぜいたく品や高価な商品は製造禁止となり、宮古上布も製造が禁止されました。

敗戦後に生産は再開されましたが、原料の苧麻が不足して生産量は大きく減り、衰退していきます。

現在は、宮古上布の文化や技術が途絶えないよう、研修などを通して伝統を担う若手の育成に力を入れています。

宮古上布の特徴

宮古上布はやわらかな風合いや光沢、模様が特徴的です。

やわらかさや光沢はどのように作られ、模様にはどのような意味があるのでしょうか。

本項では、高級品といわれる宮古上布の特徴を3つ解説します。

軽くやわらかな風合い

薄く軽やかで、透き通ったトンボの羽にたとえられる宮古上布は、軽くやわらかな風合いが特徴です。

暑い気候でも快適に着られるよう設計されており、触れるとしなやかな弾みがあって肌に付かず風が通り抜けるため、夏に心地よく着られます。

また、宮古上布は苧麻から糸を作る際、細かく裂いた40〜60cmほどの苧麻を撚りながら紡ぎ、1本の糸にしていく難しい技術が必要です。

糸を結ばず先を揃えて撚り合わせていくため、芭蕉布などのような糸の結び目がありません。

独特な光沢

宮古上布にはロウを塗ったような独特な光沢があります。

この光沢は、砧打ち(きぬたうち)と呼ばれる木槌で布を叩いて仕上げる工程によるものです。

4㎏ほどの木槌を使い、3〜4時間隅々までまんべんなく砧打ちをおこなうことで、しなやかさと艶を蓄えた光沢のある上布に仕上がります。

4種類の模様

宮古上布の模様は大きく分けて鳥や動物、自然植物、生活用具、幾何学模様の4つに分類されます。

縁起物や生活にかかせないものが取り入れられており、良いものは引き寄せ、悪いものからは身を守るといった考えがあらわされています。

以下は模様の種類と意味を表にまとめたものです。

模様の種類意味
銭玉(ジンダマ)お金の模様です。お金に困らないようにとの願いが込められています。
豚の餌箱(トーニ)豚はタンパク質源にもなりお金にもなります。その豚を育てるための餌箱があらわされています。
亀の甲(カミヌクー)カメは縁起物の象徴です。健康で長生きするようにとの願いが込められています。
はさみ(パサン)悪いものを断ち切る意味があります。
麻の葉麻は昔から悪いものが来ないようにと赤ちゃんの産着の模様として使われており、魔除けの意味を持っています。

宮古上布の見分け方

仕上がるまでに何年もかかる宮古上布は、需要が高く値段も高額です。

現在は中古での購入も可能なため、他の上布と間違えないよう、宮古上布の見分け方を知っておくとよいでしょう。

宮古上布には、宮古織物事業協同組合が発行する証紙が付いています。

宮古織物事業協同組合が正規に流通させている商品、もしくは同組合員が作成した商品でないと、宮古上布とはいえません。

また、繊細な糸で紡ぎ出される織りが細かい点も、宮古上布の特徴の1つです。

宮古上布には絣の柄合わせをするための耳じるしがあります。

反物の端、耳と呼ばれる部分の緯糸に付けられるもので、袂の内側などをみると端の経糸に白い糸が所々見えます。

砧打ちによる独特の光沢も見分けるポイントで、適度なツヤがあるかどうか確認しましょう。

宮古上布の作り方

宮古上布は以下の7つの行程を経て作ります。

  1. 糸の原料である苧麻(ちょま)から繊維をとる
  2. 糸績み(いとうみ)
  3. 図案と絣締め
  4. 染色
  5. 製織
  6. 洗濯加工(砧打ち)
  7. 検査

本項では、手作業でおこなわれる各工程の詳細を解説します。

1.糸の原料である苧麻(ちょま)から繊維をとる

宮古上布に使う糸の原料は、イラクサ科の多年草である苧麻からとれる繊維です。

宮古島は気候が温暖なため生育が良く、35〜40日かけて1.5mほどに育ったときに刈り取り、葉を落とします。

はぎとった皮は水につけてアク抜きし、アワビの貝殻を使って繊維以外をそぎ落とします。

残った繊維を陰干しし、乾燥させると糸の原料の完成です。

2.糸績み(いとうみ)

苧麻から取った繊維を、爪や指で髪の毛ほどのごく細い糸に裂く作業を糸績み(いとうみ)といいます。

経糸・緯糸ともに手で績むのが特徴です。

髪の毛の細さほどまで裂いたら、結ばずに撚り合わせて1本の糸にします。

結ばずに撚り合わせるため、糸に結び目がないのも大きな特徴です。

つないだ糸を糸車にかけて撚りかけ、緯糸は1本撚り、経糸は2本撚りにします。

3.図案と絣締め

宮古上布の図柄は方眼紙の小さなマスに、十字絣を描いてデザインを決めます。

模様の図案や設計書を作るのは、「意匠」と呼ばれる職人です。

絣用の糸は一反分に合わせて必要な長さに整経(せいけい)したあと、絣締めの際に模様がずれないよう糊づけします。

糊が乾いたら手括りもしくは締機を使って絣締めし、図案どおりに白く残す部分を木綿糸でまとめたら、むらなく染めるために糊を落とします。

4.染色

染料に使われるのは、沖縄本島で昔から栽培されている琉球藍です。

ポリ容器に泥状の藍を入れ、苛性ソーダと醗酵を促す泡盛や黒糖を入れてよくかき混ぜます。

1〜2週間で醗酵すると藍の花といわれる泡が出るため、そこに絣むしろと無地の地糸をつけて染めていきます。

1回染めるごとに十分空気に触れさせ、しぼって4〜5時間天日干しする作業を20回ほど繰り返し、黒に近い色になれば染め上がりです。

5.製織

糸が染め上がったら絣を締めていた木綿糸を取り、十分に洗って乾かします。

次におこなうのは、用意した図案に合わせて1本ずつ仮筬(かりおさ)に通していく「仮筬通し」です。

仮筬通し後は糸を巻き取り、経絣と緯絣が十文字になるように1本1本織り込んでいきます。

絣模様がずれないよう針先で経糸の模様のずれを直す作業を繰り返しながら織るため、熟練した人でも1日わずか20cmほど、1反織りあげるのにかかる期間は3〜4か月です。

6.洗濯加工(砧打ち)

織り上がった布は、釜で煮て汚れを落として十分に水洗いをしてから陰干しし、澱粉糊でまんべんなく糊付けしたあと、長さと巾を整え折りたたみます。

アカギの台の上に布を置き、重さ4㎏もある木槌でむらなく3〜4時間ほど叩きます。

これを砧打ちといい、宮古上布の特徴である光沢のあるなめらかな布に仕上げるのに重要な作業です。

7.検査

洗濯加工を終えると、専門の検査員によって検査がおこなわれます。

糸切れや絣合わせ、織り傷などいくつもの検査項目があり、補修できる部分は補修して完成です。

合格したもののみに宮古織物事業協同組合の登録商標や検査済の証などが貼付され、宮古上布として商品になります。

宮古上布を着たあとのお手入れ方法

宮古上布を良い状態で長く楽しむためには、適切なお手入れが大切です。

お手入れには、和装用ハンガーや霧吹きを準備します。

風通しがよく、直射日光の当たらない場所で和装用ハンガーにかけ、シワが気になる部分に霧吹きで水をかけましょう。

布自体の重みでシワが伸びるため、そのまま自然乾燥で完全に乾かします。

汚れが付いてしまった場合は、クリーニング店などで丸洗いするのがおすすめです。

自宅で手入れする際は、浴槽にたっぷりと貯めた水に弱アルカリ性の洗剤を薄く使用し、こすらずに押し洗いします。

洗ったあとは絞らずにやわらかいタオルで水気を取り、和装用ハンガーにかけて風通しの良い場所で陰干ししましょう。

彩~irodori~取扱商品

 いわゆる「紺上布」と言われる藍染した宮古上布。

年間の生産数は片手で数えるほど。探すのに一番苦労する着物のひとつに数えられる。

2024年8月1日撮影

2024年8月1日撮影

2024年8月1日撮影

まるで蝋引きされたような光沢のある生地は、砧打ちによって表現される。

他の上布にはない宮古上布だけの特徴のひとつ。 

2024年8月1日撮影

2024年8月1日撮影

全体に施された亀甲絣。同じ柄の連続のため難が目立ちやすく、少しのずれも許されない。

2024年8月1日撮影

2024年8月1日撮影上記商品以外にも、様々な宮古上布を取り揃えております。ご興味のある方はぜひお問い合わせを。

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