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沖縄の織物「芭蕉布」の着物とは?歴史や作業工程と保管方法を解説

着物

重要文化財

沖縄の伝統的な織物、芭蕉布をご存知でしょうか?

聞いたことがある、着物を着てみたいなどの関心はあるとしても、詳しくは知らないという方が多いかもしれません。

限られた地域でのみつくられている芭蕉布は、いくつもある工程をすべて手作業でおこなっています。

ひとつひとつ手織りでつくられるため、生産量が少なく、希少な織物です。

この記事では、芭蕉布の歴史や作業工程、保管方法を解説します。

目次

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芭蕉布とは

芭蕉布とは、実芭蕉(バナナ) の仲間である糸芭蕉の繊維でつくる、沖縄の代表的な織物です。

糸芭蕉は糸がとれる大きさに成長するまで2〜3年ほどかかります。

1本の糸芭蕉からとれる繊維の量は、20グラム程度しかありません。

さらに繊維は繊細で扱いが難しいため、布ができあがるまでの作業工程は長く複雑です。

芭蕉布の着物は琉球王朝時代までさかのぼり、王族から庶民まで愛されていた織物です。

戦前までは沖縄の各地で織られていました。

しかし、現在織られているのは沖縄県大宜味村喜如嘉(きじょか)とごく一部の地域のみです。

「喜如嘉の芭蕉布」として重要無形文化財に指定されています。

糸芭蕉を育てるところから布に織りあげるまで手仕事でつくられる芭蕉布は、数百年前とほとんど変わらない方法です。

芭蕉布の歴史

芭蕉布の歴史は琉球王朝時代までさかのぼります。

13世紀ごろから始まり、女性の副業として発展します。

戦後の衰退から一人の女性の尽力により復興するまでの芭蕉布の歴史を見ていきましょう。

始まりは13世紀ごろまでさかのぼる

芭蕉布は琉球王朝時代の12〜13世紀ごろから織られていたと言われています。

王族の衣服や役人の制服として、また貢ぎ物や交易品として中国や江戸幕府へ献上されていました。

身分の高い人たちに使用される一方、庶民の晴れ着や普段着としても使われ広まっていきます。

高温多湿な気候でも、涼しく肌にまとわりつかない着物は重宝され、庶民にとって欠かせないものでした。

女性の副業として発展したが戦時中の生産中止で衰退

明治から昭和にかけて、芭蕉布づくりは農業をする女性たちの副業として生産が盛んになりました。

自家用で生産されていた芭蕉布は無地や縞模様のみでしたが、女性たちによって絣模様(かすりもよう)も取り入れられます。

それをきっかけに発展し、次第に産業として定着していきます。

しかし、第二次世界大戦中、作り手がいなくなって生産中止後、衰退していきました。

平良敏子さんの尽力により戦後復興する

終戦後、復興に尽力したのは平良敏子さんの功績のおかげです。

民藝や染織について学び、地元沖縄に戻って復興活動をおこなっていました。

戦時中、女子挺身隊として本土の工場で働いていた平良さんは、終戦後、民藝運動に熱心だった倉敷紡績工場の大原総一郎社長の勧めで織物を学びます。

当時は軍需産業が全盛で芭蕉布は需要がなく、安く買い叩かれるため仕事として成立しませんでした。

しかし、過酷な状況でも地元で人を集めて、技術の継承など復興に向けた活動を続けます。

のちに「喜如嘉の芭蕉布保存会」を設立し、平良さんの作品が各地の品評会や工芸展で入賞すると、注目を浴び芭蕉布は広く知れ渡るようになりました。

喜如嘉の芭蕉布 九寸名古屋帯 重要無形文化財 人間国宝平良敏子

喜如嘉の芭蕉布 平良敏子 人間国宝 重要無形文化財 夏物

芭蕉布の特徴

天然素材・天然染料でつくられる芭蕉布は、生産量が限られている希少価値の高い生地です。

トンボの羽に例えられるほど、薄くて軽い特徴があります。

芭蕉布の着物は、汗をかきやすい高温多湿の日本の夏でも肌にまとわりつきにくく、さらりと着用できます。

麻とは違ったハリ感があり、着付けしにくいと言われていますが、着れば着るほど繊維が柔らかくしなやかになってなじみやすいです。

またできあがったばかりの芭蕉布の着物は、触れるとひんやりするため、梅雨の時期から夏に着るのがいいでしょう。

芭蕉布づくりの作業工程①栽培~苧引き (うーびき)

芭蕉布づくりで「織り」は工程の1%程度しかありません。

大事なのは、最初の工程である畑づくりです。

芭蕉布ができるまでには23もの工程があり、ひとつひとつ手仕事で仕上げられます。

ここでは糸芭蕉から糸になるまでを紹介します。

糸芭蕉を育てる

野生の糸芭蕉は繊維が硬いため、「喜如嘉の芭蕉布」の利用には向いていません。

そこで、繊維を柔らかくする作業を繰り返し、手間をかけて育てられた糸芭蕉が使われます。

繊維を柔らかくするためには、葉落としや芯止めといった、根と先端の太さを一定にする作業を年に2〜3回繰り返します。

この作業は繊維の質を左右する重要な作業です。

葉が巻いて層になっていく幹を3年かけて太らせ、「苧倒し」(うーとーし)とよばれる収穫時期を迎えるまで待ちます。

収穫は毎年10月の秋から翌年2月頃冬にかけておこないます。

この時期を過ぎると、繊維が硬くなりやすいです。

畑づくりが重要と言われるのは、繊維の質を決める重要な過程を担っているからです。

皮を剥ぎ4つに分ける

糸芭蕉とその繊維を苧 (うー) と呼びます。

収穫した芭蕉の皮を剥ぐ「苧剥ぎ」(うーはぎ)は20数枚の層になった苧 (うー) を表から1枚ずつ剥いでいき、4種類に分別します。

分別された苧(うー) を煮沸して柔らかくする作業が「苧焚き」(うーだき)です。

繊維の硬さがそれぞれ異なるため、別々に煮沸します。

煮沸に使う木灰汁 (もくはいじる) のアルカリ性が繊維を柔らかくしますが、アルカリ度が強いと繊維が切れやすく、薄いと柔らかくなりません。

そのため、濃度の調整はベテランでも難しい作業です。

水洗いして不純物を取り除く

煮沸した苧 (うー) は、束が崩れないように気をつけながら水洗いをして、木灰汁を落とします。

水洗いした苧 (うー)の不純物を取り除き、繊維を取り出す作業が苧引き (うーびき)です。

竹でできた専用の道具で原皮をしごき、不純物を落とします。

柔らかい繊維は緯糸(よこいと)用に、硬い繊維や色のついた繊維は経糸(たていと)用に分けるのがポイントです。

分けられた糸は竿にかけ、風の当たらない日陰に干して乾燥します。

苧引き (うーびき)の良し悪しが布の仕上がりに大きく影響するため、重要な工程です。

芭蕉布づくりの作業工程②苧績み(うーうみ)~煮綛 (にーがし)

繊細な繊維から丈夫な糸をつくる工程は難しく、時間がかかるため経験が必要です。

ここでは取り出した繊維を長い糸にするまでの工程を紹介します。

繊維を毬状に丸めて裂いていく

乾燥させた長い繊維を2〜3本ずつ巻いて毬状(きゅうじょう)に丸め、こぶし大の大きさのチング巻きをつくります。

チングから糸をつくる作業が苧績み(うーうみ)です。

チングを水に浸したら、小刀を使い用途に応じて決めた太さに繊維を裂き、機結び (はたむすび )で長い糸にしていきます。

この作業はできあがる布の品質を左右するため、結ぶ目をなるべく目立たないようにしなければなりません。

緻密さが要求される作業は、工程の中でも時間がかかり、忍耐と経験が必要とされます。

緯糸(よこいと)は手で巻き経糸(たていと)は糸車で丈夫にする

緯糸(よこいと)の地糸は、撚り(より)をかけずに手巻きします。

撚りをかけるとは、糸をねじり合わせて強くすることですが、緯糸ではおこないません。

経糸(たていと)と緯絣糸(よこかすりいと)は毛羽立ちを防いで丈夫にするために、糸車を使って撚りをかけます。

このとき、霧吹きをかけて湿気を与えながら縦管に巻き取ります。

長さと本数を決めて木灰汁で煮る

湿らせた糸は湿気を吸っていて傷みやすいため、回転式の整経台で手早く整経します。

整経とは、布に織られたときのムラを防ぐ作業です。

経糸は4本ずつ、緯絣糸は1本ずつ整経したあと、使いやすい長さにまとめられた糸を木灰汁で煮て柔らかくする煮綛 (にーがし)と呼ばれる作業をおこないます。

上質な糸ほど煮綛 (にーがし)の時間はかかりません。

その後よく水洗いして軽く絞り、竿にかけてピンと張って干します。

芭蕉布づくりの作業工程③柄づくり~染色

仕上がりの柄を決める大事な工程です。

糸が切れたり染色がにじんだりする可能性があります。

熟練の技が必要とされる柄づくりから、染色するまでの工程を紹介します。

絣糸で柄を組み合わせる

あらかじめ決めたデザインになるように、絣糸(かすりいと)を組み合わせます。

絣用の糸はたるまないようにまっすぐ張り、尺串と呼ばれる模様の寸法どおりに印をつけた定規のような棒をあてます。

このあて方が一定でないと、最終的な絣の柄が合わなくなるため、熟練の技が必要です。

尺串の印に合わせて、染めない部分にはウバサガラと呼ばれる芭蕉の皮を巻きつけ、さらに上からビニール紐で固く結びます。

結び方が強いと糸が切れ、弱いと染色がにじむため、仕上がりの柄を決める大事な工程です。

染色

沖縄の天然の染料である車輪梅や琉球藍を用いて染めていきます。

車輪梅や琉球藍でつくった染液で煮込み、別の容器に移して蒸し、寝かせて干す作業を繰り返します。

染液の温度が高すぎたり蒸しすぎたりすると染料がにじみ、乾きすぎると糸が切れるため注意しなければなりません。

最後は海水で洗って色を固定させ、水洗いをしてから乾かします。

ウバサガラをほどき巻き取る

染めあがった糸はビニール紐をほどき、霧吹きで生乾き状態にしてからウバサガラを外します。

ここでも乾燥に弱い糸には、湿気を与えながら作業をするのがポイントです。

経絣糸は次の工程である仮筬(かりおさ)通しに備えておきます。諸染糸や緯絣糸は、湿気を与えて糸を繰る竹製の枠に巻き取ります。

芭蕉布づくりの作業工程④糸を織る

全体の1%と言われる織りですが、最後の仕上げに細心の注意をはらわなければ台無しになります。

ここではいくつもの作業を経てようやく芭蕉布が仕上がる、織りの工程を紹介します。

デザインを形にするために糸を組み合わせる

デザインに従って整経した地糸に、染めた糸を組み合わせて筬(おさ)に仮通しする作業「仮筬通し(かりおさどおし)」をおこないます。

筬とは、経糸を揃え、緯糸を押し詰めて、織り目を整えるための道具です。

仮筬通しをした糸の輪を、丸い棒に通して絣がずれないように結び、経糸の張り具合を一定にして巻き取ります。

経絣がずれて織りあがりに影響が出ないように、一定のリズムで巻き取らなければなりません。

糸を上下に分ける器具である綜絖(ふぇえー)に糸を通す

巻き取った糸を仮筬から外し、経糸と緯糸に分ける綜絖(ふぇえー)通しをおこないます。

通した糸は一対ずつ順序よく筬に通していきます。

上糸と下糸の組を取り違えないように、細心の注意と熟練の技が求められる作業です。

織り

筬に通した糸を織っていきます。

糸が乾燥して切れないように絶えず霧吹きをかけ、糸の調子を見極めながらおこなう作業です。

織りの作業では、それまでの工程でどこにミスがあったのかがわかります。

工程は苧績みや撚り掛け、巻き取りなどです。

織りあがるのに2〜4週間ほどの日数がかかります。

綿や絹に比べて切れやすく、織る作業よりも経糸の調子を整えるのに時間がかかります。

織りあがった反物を洗う

洗濯と呼ばれる最後の工程です。

織りあがった反物は石鹸とたわしでしっかりと汚れを落とし、再び沸騰させた木灰汁で煮たせます。

そのあと、米粥と米粉に水を加えて発酵させた液「ユナジ」に浸します。

木灰汁が染み込むとアルカリ性になっているため、布を中和させる作業が必要です。

再度よく洗い、干して7割ほど乾いたら、両端を2人で持ちます。

斜めの方向に交互に手で引き伸ばしたり、布の両耳を引き伸ばしたりして幅を整えます。

湯呑み茶碗を伏せて、丁寧に布をこすりながら布目を整え、乾かして引き伸ばすのを繰り返して既定のサイズに整えます。

最後にスチームアイロンをかけ湿気を取り除けば、丈夫な芭蕉布のできあがりです。

芭蕉布の着物のお手入れと保管方法

手間をかけて仕上がる芭蕉布の着物のお手入れと保管方法をご紹介します。

状態良く長持ちさせるためには、着用後のお手入れや保管方法を知っておくのが大切です。

お手入れ

自分で丸洗いする場合は、石鹸を用いて押し洗いをします。

よく水洗いしたあとは、食酢または酢酸をほんの少したらし、もう一度水洗いします。

お手入れをする理由は、布の赤みを防ぐためです。

洗ったあとは薄めた糊をつけて影干しをして、八分乾きの状態で斜めや横、縦に引っ張って、元どおりの幅と丈に整えます。

最後にゴザなどにくるみ、スチームアイロンで仕上げをします。

お手入れが難しい人や失敗したくない人は、購入したお店に相談したり、喜如嘉の芭蕉布組合に連絡してみたりするとよいでしょう。

しわは湿らせて取る

バッグを肘にかけた部分などがシワになった場合は、手で水をつけたり、携帯用の小さなスプレーで湿らせたりするとシワが取れます。

水滴でシミになることはないので、ご安心ください。

また、着たあとの着物や帯の着ジワは、吊り下げた状態で霧吹きをかけて湿らせ、手で丁寧にシワを伸ばしておきましょう。

保管はタンスの下段

乾燥を嫌う芭蕉布は、ある程度湿気があるところで保管します。

乾燥し過ぎると繊維が切れやすく、破損しやすくなるからです。

もし乾燥剤と一緒に保管すると、縫い目のところから繊維が切れる恐れがあります。

乾燥剤などは使用せず、なるべく湿度が高いタンスの下段に保管してください。

綿布の風呂敷などに包みつつ、虫食いの被害にあわないようにウール類とは別にして保管するのがポイントです。

現代の芭蕉布は着物だけではない

芭蕉布は、技術者の高齢化や後継者不足により、作り手が減少し生産数が減っています。

そのため価格も高騰し、手に入りにくくなっているのが現状です。

喜如嘉芭蕉布事業協同組合では技術の継承と、後継者の育成に力を注いでいます。

同時に芭蕉布の魅力を伝え、身近に感じてもらうための工夫を凝らしています。

現在は着物や帯だけではなく、ネクタイやハンドバッグなどの衣類やファッション雑貨もつくられているのが魅力的です。

まとめ

「喜如嘉の芭蕉布」として重要無形文化財に指定されている芭蕉布は、数百年前とほとんど変わらない手仕事でつくられている希少な工芸品です。

織りあがった芭蕉布の着物はさらりとした着心地で、梅雨の時期から夏に着るのがおすすめです。

生産数が少なく価格も高騰し手に入りにくくなっていますが、着物や帯だけでなくネクタイやファッション雑貨もつくられています。

芭蕉布に関心がある人は、雑貨類から試してみてはいかがでしょうか。

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